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令和3年度大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査結果について

2023 . 12 . 01

開催日・期間 開催日・期間
開催時間 開催時間
申込期限 申込期限
実施主体 実施主体
環境省
環境省
環境省では、公害健康被害補償法に基づく第一種地域指定の解除(昭和62年改正)に伴い、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的・継続的に観察し、必要に応じて所要の措置を講ずるために、大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査を平成8年度から毎年度実施しています。
この度、令和3年度の調査結果を取りまとめましたので、公表します。

■ 調査結果の概要

 例年どおり、3歳児を対象とした調査(以下「3歳児調査」という。)及び小学1年生を対象とした調査(以下「6歳児調査」という。)を実施して、それらの調査結果についての単年度解析並びに平成9~令和3年度の3歳児調査及び平成16~令和3年度の6歳児調査のそれぞれを統合したデータを用いた経年・統合解析等を行った。また、令和3年度の6歳児調査回答者のうち平成29~30年度に実施した3歳児調査時に回答のあった者について追跡解析を行った。
 3歳児調査の対象者は全国35地域の約7万7千人(回答者は約6万5千人)であり、6歳児調査の対象者は全国36地域の約7万8千人(回答者は約6万8千人)であった。
 これらの解析の結果、呼吸器症状のうちぜん息については以下のとおりであった。
 単年度解析では、対象者別背景濃度区分ごとの呼吸器症状有症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と呼吸器症状有症率の検討において、3歳児調査、6歳児調査ともに大気汚染物質濃度が高くなるほど有症率が高くなる傾向はみられなかった。オッズ比による検討では、3歳児調査については、SO2とぜん息で1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果(オッズ比:1.11、95%信頼区間[1.04-1.19])がみられた。6歳児調査については、大気汚染とぜん息有症率に1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果は得られなかった。
 大気汚染物質濃度と呼吸器症状有症率の経年解析においては、大気汚染によると思われるぜん息有症率の増加を示す地域はみられなかった。
 統合解析では、対象者別背景濃度区分ごとの呼吸器症状有症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と呼吸器症状有症率の検討において、大気汚染物質濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなる傾向はみられなかった。オッズ比による検討においては、3歳児調査及び6歳児調査ともに、1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果は得られなかった。
 追跡解析及びその経年解析により、ぜん息発症率についても同様の検討(統合解析を除く)を行ったが、大気汚染物質濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなる傾向はみられなかった。
 また、大気汚染物質以外では、3歳児調査及び6歳児調査で、「本人のアレルギー疾患の既往あり」、「親のアレルギー疾患の既往あり」において、オッズ比が2~3程度の統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られた。統合したデータにおけるオッズ比の検討でも、同様の結果が得られた。
 なお、ぜん息以外の呼吸器症状有症率については、オッズ比の検討において、3歳児調査では、「かぜひき回数(5回以上)」のSO、O8、PM2.5、「ぜん鳴」のOY、「ぜん鳴(かぜなし)+ぜん息」のSO、SPMにおいて1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られた。6歳児調査では、「ぜん鳴」と「ぜん鳴(かぜなし)」、「ぜん鳴(かぜなし)+ぜん息」のOYで1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られた。

■ 今後の課題

 これまでの調査報告では、3歳児調査(平成8~令和2年度の計25回)及び6歳児調査(平成16~令和2年度の計17回)の単年度解析で大気汚染(SPM)と「ぜん息」又は「ぜん息(2年以内)」において1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られたことが過去に何度かあったが、常に1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果を示すような一定の傾向として捉えられる状況にはなかった。今年度は、3歳児調査では、「ぜん息」のSOにおいて1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られたが、6歳児調査では大気汚染とぜん息有症率に1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果は得られなかった。SOは近年低濃度で推移しており、健康被害との関連性が少なくなっているとみられるが、今後も調査対象として注意深く観察を継続する。統合したデータを用いた検討では、対象者別背景濃度区分ごとの呼吸器症状有症率、調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と呼吸器症状有症率において、大気汚染物質濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなることを示す結果は得られなかった。オッズ比による検討において3歳児調査及び6歳児調査のいずれにおいても1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果は得られなかった。追跡解析(平成16~令和3年度の計18回)においても、大気汚染(NO、NO)とぜん息の発症に1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られたことが過去に一度あったが、常に1を超えて統計学的に有意(p<0.05)な結果が得られるような一定の傾向として捉えられる状況にはなかった。
 環境調査における大気汚染物質濃度について、NO、NO、SPMは全般的に低下傾向にあり、SOは低濃度で推移している。今後はO、PM2.5を含む大気汚染とぜん息等の呼吸器症状との関連性について地域特性も踏まえて注意深く観察するとともに、環境保健サーベイランス・局地的大気汚染健康影響検討会のワーキンググループにおいて検討を進めていく。
 経年・統合解析においては、長期的な大気汚染の傾向を考慮して、例えば5年程度の統合したデータを用いて経年的に比較するなど、解析方法の検討を行っているが、今後も引き続き検討を進める。
 また、追跡解析は、10年度分以上のデータが蓄積したことから、平成28年度からぜん息の発症・持続についての経年解析を追加した。追跡統合解析に係る評価方法及びデータの取扱いの検討を更に進める。

連絡先

環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課保健業務室
代表:03-3581-3351
直通:03-5521-8255

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