取組紹介

エリア 広島県

【協働取組事例】芦田川きれい☆きれいプロジェクト

主体
テーマ
方法

芦田川きれい☆きれいプロジェクト

【主 体】
芦田川環境マネジメントセンター

【協働パートナー】
国土交通省福山河川国道事務所、福山市
こどもエコクラブ等の市民団体
エフエムふくやま等

 ◆背 景

芦田川は広島県三原市大和町蔵宗(標高570m)を源流とした、全長約86km、流域面積約860km2の一級河川です。広島県5市2町、岡山県2市にまたがり、広島県東部の社会・経済・文化の中心をなしています。芦田川は、年間降水量が全国平均の3分の2と水が少ないのに対して、水道用水、工業用水、農業用水として約9割も利用されています。少ない雨量に対して水の使用量が多く、さらに河川への生活雑排水の流入の占める割合が大きいことから、水質は中国地方1級河川13水系の中で38年連続ワースト1でした(平成22年まで)。平成23年には最下位から一旦脱しましたが、平成24年には再びワースト1になり、水環境の改善が大きな課題となっています。

◆芦田川マネジメントセンター設立の経緯

平成15年4月に国土交通省により『第二期水環境改善行動計画(清流ルネッサンスⅡ)が策定され、芦田川も対象に選ばれました。芦田川の水環境改善には、従来の下水道事業や河川事業に加えて、流域住民の一人ひとりが、芦田川の水環境に問題意識を持って取り組むことが必要でした。そこで、地元市町や地域住民が一体となった対策を展開するための各種支援活動を行う組織として、市民、事業者、環境団体、研究者、行政等が連携した「芦田川環境マネジメントセンター」が平成16年に設立されました。

◆芦田川環境マネジメントセンターの目的

身近な水路の浄化や生活排水負荷の削減などを地域住民、地元企業、行政と一体となって取り組み、芦田川流域の水環境を改善していく。

◆活動内容

芦田川環境マネジメントセンターの主な活動は次の3つです。
①川の健康診断(6月上旬、10月下旬)
(内容)
一般公募による参加者とともに、芦田川流域17地点の水質などをチェックする。

②水辺の学び舎(9月下旬)
(内容)
子ども達が川に入って、生き物を探す、調べる、観察する、発見する、納得するといった一連の体験を通して、より芦田川への理解を深める。結果は「さかなマップ」としてまとめる。

③河川浄化チャレンジ月間(11月の1ヶ月間)
(内容)
家庭でできる水質浄化の取り組みの実践を呼びかけ、取組み前後の水質の変化を調べてホームページ等で公表する。

◆成果と今後の課題

地道な活動の成果もあり、設立当時から比べて川に浮かんでいるゴミが減り、市民の関心の高まっていることを感じているそうです。今後は、活動を次世代へつなげていくためにも子ども達の参加を積極的に促していきたいとのこと。また活動を流域全体へと拡大させ、さらに行政と住民が一体となって取り組んでいくことが求められます。

◆ここがポイント

①現場レベルでの連携
市民、事業者、環境団体、研究者、行政等が連携して「芦田川環境マネジメントセンター」を設立。運営だけではなく活動の現場においてもスタッフとして参加し、連携しています。

②地元メディアを活用
エフエムふくやまに事務局を設置し、ラジオや地元コミュニティ誌を通じて芦田川への地域の関心を高め、活動の参加を促しています。

芦田川環境マネジメントセンターではそれぞれの活動の様子や調査の結果をホームページに公開しており情報の発信を積極的に行っています。

詳しい活動内容についてはホームページをご覧ください。
http://fm777.co.jp/pc/aemc/index.html

◆具体事例の紹介

活動名:「平成25年度 芦田川川の健康診断(秋季調査)」
開催日:2013年10月20日(日)

小雨が降る中、子どもから高齢者まで幅広い参加者約30名が「芦田川見る視る館」に集まりました。芦田川環境マネジメントセンターでは毎年、春と秋の年2回、芦田川の17地点で水質チェックを目的に「川の健康診断」を実施しています。

まず、スタッフからスケジュールや手順について説明を受けました。その後、10グループに分かれて、それぞれ調査地点へ向かいました。同行したグループは、こどもエコクラブサポーターの女性、エコクラブメンバーの小学2年生の男の子、中学2年生の女の子とお母さんという4人のメンバー。1箇所目の調査地点「鶴ヶ橋」へ到着すると早速、何度も参加しているという女の子が慣れた様子で橋の上からバケツを落として水を汲み始めました。

汲みあげた川の水で調査に使用するボトルなどの容器を洗う「とも洗い」を行った上でボトルへ水を詰めかえます。次に「感覚による水質チェック」を実施しました。ゴミは浮いているか、にごっているか、さわった感じは?など5つの項目を調査します。本来は、この場所でパックテストによる水質調査を行いますが、この日は雨天のため汲んだ水を持ち帰って後で調査することになりました。

もう一カ所の調査地点、「中津原取水堰」へ移動し、そこでも同じ調査を実施しました。参加者は過去に何度も参加している人ばかりでスムーズに進みました。

2箇所で汲んだ水を「芦田川見る視る館」へ持ち帰り、パックテストによる水質調査を実施しました。パックテストとはチューブ型の容器に薬品が入ったもので、調べたい水を容器で吸い取ると、色の変化でおおよその水質がわかるという調査方法です。これで調べるのが、家庭排水などによる川の汚れを調べる上で目安となるCOD(化学的酸素要求量)、NO2(亜硝酸)、PO4(リン酸)の3種類。この3種類の値と感覚チェックの結果をそれぞれ点数化し、各地点の水質を評価します。

調べた結果をグループごとに模造紙にまとめて、全体で発表し、参加者みんなで川の健康状態を確認しました。今回、数箇所の数値が前回から改善していましたが、調査の前日から当日に降った雨の影響もあるそうです。参加者からは「川の水は見た目で濁って見えても、案外きれいな場合があるとわかった」「地元の自然がよくわかって良かった」などの感想が述べられました。このように、子ども達にもわかるような形で結果を「見える化」し、共有していくことは非常に重要だと感じました。

この日の調査には、国土交通省の職員、福山市の職員、市民団体の代表、こどもエコクラブのメンバーなど多様な参加者がおり、現場レベルで行政と市民が一緒に芦田川の水質改善に取り組んでいることが伺えました。また、取り組み範囲の拡大に向けて、上流域の自治体職員も参加しており、今後、流域全体への活動の広がりが期待されます。

 

この記事の発信者

松原裕樹(まつばら ひろき)

事務局長

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