地域脱炭素って?
地域脱炭素は、脱炭素を「成長の機会」と捉える時代の地域の成長戦略です。
自治体・地域企業・市民など地域の関係者が主役になって、今ある技術を使って、再エネ等の地域資源を最大限活用することで実現でき、経済を循環させて、防災や暮らしの質の向上等の地域課題をあわせて解決し、地域の魅力と質を向上させる地方創生に貢献します。
なぜ、今、地域脱炭素の取組が必要かつ有効なの?
●地域脱炭素は地域の成長戦略になる
現在、多くの国や地域で、持続可能で脱炭素な方向の復興(グリーンリカバリー)が重視され、例えば、電動車への急速な転換など脱炭素への移行が加速しています。
環境対策は、もはや経済成長の源泉でもあり、地域経済においても同様で世界の潮流に乗り遅れれば、国内産業や国力の衰退にもつながります。
脱炭素をできるだけ早期に実現することが、地域の企業立地・投資上の魅力を高め、地域の産業の競争力を維持向上させるという意味での地域の成長戦略において、極めて重要な要素となります。
●再エネ等の地域資源の最大源の活用により、地域の課題解決に貢献できる
地域脱炭素の取組は、経済循環以外にも、防災・減災や生活の質の向上など、次のように様々な地域の課題の解決にも貢献します。
◆ 頻発・激甚化する災害に強い地域づくり(国土強靭化・レジリエンス向上)
再エネ等の分散型エネルギー導入は非常時のエネルギー源確保につながり、また、吸収源である生態系を保全することは、洪水等の被害への緩衝材になります。これらの災害に強い地域づくりは、国土全体の強靭化につながります。
◆ 将来世代を含む地域住民の健康の維持と暮らしの改善(Well-beingの実現)
住宅の断熱性等を向上させることは快適な住まいの実現につながります。
エネルギー源として再エネを活用した、MaaS等の新しいサービス形態による交通システムを整備することによって、高齢者等を含めた地域住民の暮らしを支える移動手段の確保につながります。
◆ 大都市圏から地方への分散移住(一極集中の解消)
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワーク等の多様な働き方や、勤務地や住居が大都市圏から地方へと分散する、移住・二地域居住が広がっています。再エネ等の地域資源を活かす自立分散型の地域づくりは、こうした動きを支えます。
◆ 豊かな自然との共生(人間らしいライフスタイル)
森林や里地里山を手入れしながら、木材や自然資源(バイオマス)として活用することは、暮らしを支える豊かで美しい自然を守り、共生する人間らしいライフスタイルを再構築することにつながります。
●一人一人が主体となって今ある技術で取り組める
温室効果ガス排出量は、消費ベースで約6割を家計が占めているそうです。
大量生産・大量消費・大量廃棄から、適量生産・適量購入・循環利用へ
ライフスタイルを転換し、多くの人が、脱炭素型の製品・サービスを選択することで、暮らしを豊かにしながら、需要側から国全体の脱炭素実現を牽引することができます。
暮らしの脱炭素は、再エネ等の分散型エネルギーの活用や、省エネ性能の高い設備機器やリユース製品の使用など、現時点で適用可能な技術を最大限活用することによって、今からの短期間でも目に見える成果を出しやすい分野です。
地域発の「実行の脱炭素ドミノ」を起こす
● 今後の5年間に政策を総動員して、人材・技術・情報・資金を積極支援
① 2030年度までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」をつくる
② 全国で、重点対策を実行(自家消費型太陽光、省エネ住宅、電動車など)
● 3つの基盤的施策(①継続的・包括的支援、②ライフスタイルイノベーション、③制度改革)を実施
● モデルを全国に伝搬し、2050年を待たずに脱炭素達成(脱炭素ドミノ)
「実行の脱炭素ドミノ」は、自然発生するものではありません。
i)地域特性に応じて適用可能な最新技術を活用して脱炭素を達成する事例を積み重ね、その絵姿や地域が享受する多大なメリット・ノウハウを広く展開することで、周辺地域や同様の地理的条件を有する地域の意欲と理解を醸成します。
ii)脱炭素に資する技術・サービスの普及を促し、需要を増加させるとともに、標準化や技術力向上を進め、脱炭素に要する社会的コストを削減します。
iii)地域脱炭素に必要な設備投資の原資やけん引役となる人材や技術等を確保します。
国と地方の行政、企業や金融機関、一般市民が一致協力することにより、初めて起こすことができるのです。
脱炭素ロードマップは、このような考えの下、対策・施策を総動員して「実行の脱炭素ドミノ」を起こし、2030年以降も全国へと地域脱炭素の取組を広げ、2050年を待たずして多くの地域で、脱炭素を達成し、地域課題を解決した強靭で活力ある次の時代の地域社会へと移行することを目指しています。
地域脱炭素ロードマップの対策・施策
2030年度目標及び2050年カーボンニュートラルという野心的な目標に向けて、今後の5年間を集中期間として、政策を総動員して、地域脱炭素の取組を加速しています。
取組1)脱炭素先行地域をつくる
● 地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、環境省を中心に国も積極的に支援しながら、少なくとも100か所の脱炭素先行地域で、地域特性等に応じて脱炭素に向かう先行的な取組を実行
● 地域課題を解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取組の方向性を示す
地域と暮らしに密接に関わる分野の温室効果ガスの削減に取り組み、民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出については実質ゼロを実現
取組2)脱炭素の基盤となる重点対策の全国実施(各地の創意工夫を横展開)
①案件形成
・地方自治体、地元企業・金融機関が中心になり複合的な事業を進める。
・ガイドブックの作成
・脱炭素先行地域の実現に有望な地域のリスト等作成
・温対法や農山漁村再エネ法に基づく促進区域の設定等の促進
②関連する取組との連携
・スマートシティ、バイオマス産業都市等の関係省庁の進める地域づくりと連携
・先行地域内だけでなく、周辺区域の脱炭素化に向けより広域的に取り組む等、柔軟に対応
・先行地域の対象分野以外の脱炭素化は地域特性に十分に配慮しながら連携
③取組状況の評価分析
・取組の進捗状況、排出削減や経済活性化等の成果を定期的に評価分析、透明性を確保
・優れた地域を表彰する仕組みなどを導入し、ノウハウや人材の横展開
・エネルギー需給の管理は、ブロックチェーン技術等を活用しつつ効率的に実施
●全国津々浦々で取り組む脱炭素の基盤となる重点対策を整理
●国はガイドライン策定や積極的支援メカニズムにより協力
①屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
②地域共生・地域裨益型再エネ(再エネ事業の収益が地域にとどまる)の立地
③公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
④住宅・建築物の省エネ性能等の向上
⑤ゼロカーボン・ドライブ(再エネ電気×EV/PHEV/FCV)
⑥資源循環の高度化を通じた循環経済への移行
⑦コンパクト・プラス・ネットワーク等による脱炭素型まちづくり
⑧食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立
○ 公共インフラ・構造物やエネルギー供給インフラの移行は、今から時間をかけて進める
○ 農林水産業や地域の将来を見据えた持続可能な食料システムの構築は、脱炭素に貢献します
「地域脱炭素ロードマップ」では、
地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、環境省を中心に国も積極的に支援しながら、少なくとも100か所の脱炭素先行地域で、2025年度までに、脱炭素に向かう地域特性等に応じた先行的な取組実施の道筋をつけ、2030年度までに実行し、これにより、農山漁村、離島、都市部の街区など多様な地域において、地域課題を同時解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取組の方向性を示すこととしています。