環境省では、公害健康被害補償法に基づく第一種地域指定の解除(昭和62年改正)に伴い、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係を定期的・継続的に観察し、必要に応じて所要の措置を講ずるために、大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査を平成8年度から毎年度実施しています。
この度、令和2年度の調査結果を取りまとめたので、公表します。
この度、令和2年度の調査結果を取りまとめたので、公表します。
■ 調査結果の概要
例年どおり、3歳児を対象とした調査(以下「3歳児調査」という。)及び小学1年生を対象とした調査(以下「6歳児調査」という。)を実施して、それらの調査結果についての単年度解析、並びに、平成9~令和2年度の3歳児調査及び平成16~令和2年度の6歳児調査のそれぞれを統合したデータを用いた経年・統合解析等を行った。
また、令和2年度の6歳児調査回答者のうち平成28~29年度に実施した3歳児調査時に回答のあった者について追跡解析を行った。
3歳児調査の対象者は全国35地域の約7万4千人(回答者は約6万3千人)であり、6歳児調査の対象者は全国36地域の約7万9千人(回答者は約7万人)であった。
これらの解析の結果、呼吸器症状のうちぜん息については以下のとおりであった。
これらの解析の結果、呼吸器症状のうちぜん息については以下のとおりであった。
単年度解析では、対象者別背景濃度区分ごとの呼吸器症状有症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と呼吸器症状有症率の検討において、3歳児調査については、大気汚染物質濃度が高い地域ほどぜん息有症率が高くなる傾向はみられなかった。
6歳児調査については、NOXにおいてわずかながら濃度区分が高くなるほど有症率が高くなる傾向がみられた。オッズ比による検討においては、3歳児調査及び6歳児調査ともに、有意な正の関連性を示す結果は得られなかった。
大気汚染物質濃度と呼吸器症状有症率の経年解析においては、大気汚染によると思われるぜん息有症率の増加を示す地域はみられなかった。
統合解析では、対象者別背景濃度区分ごとの呼吸器症状有症率及び調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と呼吸器症状有症率の検討において、大気汚染物質濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなる傾向はみられなかった。オッズ比による検討においては、3歳児調査及び6歳児調査ともに、有意な正の関連性を示す結果は得られなかった。
追跡解析及びその経年解析により、ぜん息発症率についても同様の検討(統合解析を除く。)を行ったが、有意な正の関連性を示す結果は得られなかった。
また、大気汚染物質以外では、3歳児調査及び6歳児調査で、本人のアレルギー疾患の既往あり、親のアレルギー疾患の既往ありにおいて、オッズ比が2~3程度の有意な正の関連性を示す結果が得られた。統合したデータにおけるオッズ比の検討でも、同様の結果が得られた。
なお、ぜん息以外の呼吸器症状有症率については、オッズ比の検討において、3歳児調査の「ぜん鳴」と「ぜん鳴(かぜなし)」のOXY(光化学オキシダントの年平均値)及び6歳児調査の「ぜん鳴」と「ぜん鳴(かぜなし)」、「せん鳴(かぜなし)+ぜん息」のOXYで有意な正の関連性を示す結果が得られた。
■ 今後の課題
これまでの調査報告では、3歳児調査(平成8~令和2年度の計25回)及び6歳児調査(平成16~令和2年度の計17回)の単年度解析で大気汚染(SPM)とぜん息又はぜん息(2年以内)において有意な正の関連性を示す結果が得られたことが過去に何度か あったが、常に有意な正の関連性を示すような一定の傾向として捉えられる状況にはなかった。統合したデータを用いた検討では、対象者別背景濃度区分ごとの呼吸器症状有症率、調査対象地域ごとの対象者別背景濃度の平均値と呼吸器症状有症率において、大気汚染物質濃度が高くなるほどぜん息有症率が高くなることを示す結果は得られなかった。オッズ比による検討において3歳児調査及び6歳児調査のいずれにおいても有意な正の関連性を示す結果は得られなかった。追跡解析(平成16~令和2年度の計17回)においても、大気汚染(NO2、NOX)とぜん息の発症に有意な正の関連性を示す結果が得られたことが過去に一度 あったが、常に有意な正の関連性を示すような一定の傾向として捉えられる状況にはなかった。
環境調査における大気汚染物質濃度 について、NO2、NOX、SPMは全般的に低下傾向にあり、SO2は低濃度で推移している。今後はOX、PM2.5を含む大気汚染とぜん息等の呼吸器症状との関連性について地域特性も踏まえて注意深く観察する。
経年・統合解析においては、長期的な大気汚染の傾向を考慮して、例えば5年程度の統合したデータを用いて経年的に比較するなど、解析方法の検討を行っているが、今後も引き続き検討を進める。
また、追跡解析は、10年度分以上のデータが蓄積したことから、平成28年度からぜん息の発症・持続についての経年解析を追加した。追跡統合解析に係る評価方法及びデータの取扱いの検討を更に進める。
以上
環境調査における大気汚染物質濃度 について、NO2、NOX、SPMは全般的に低下傾向にあり、SO2は低濃度で推移している。今後はOX、PM2.5を含む大気汚染とぜん息等の呼吸器症状との関連性について地域特性も踏まえて注意深く観察する。
経年・統合解析においては、長期的な大気汚染の傾向を考慮して、例えば5年程度の統合したデータを用いて経年的に比較するなど、解析方法の検討を行っているが、今後も引き続き検討を進める。
また、追跡解析は、10年度分以上のデータが蓄積したことから、平成28年度からぜん息の発症・持続についての経年解析を追加した。追跡統合解析に係る評価方法及びデータの取扱いの検討を更に進める。
以上
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[1] ぜん息:(3歳児調査)平成20、25年度、(6歳児調査)平成19、21年度
ぜん息(2年以内):(6歳児調査)平成19、21、25年度
[1] 平成25年度
[1] NO2、NOX、SPM、SO2は平成8~令和2年度の調査対象期間における背景濃度
連絡先
環境省大臣官房環境保健部環境保健企画管理課保健業務室
代表:03-3581-3351
直通:03-5521-8256
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