広島発~海岸漂着物を考えるシンポジウム
【日 時】平成27年1月30日(金)
【場 所】広島国際会議場 地下2階会議室「ダリア」
【参 加 者】94名(内アンケート回答53名)
《アンケート内訳》
所属:行政(15)、企業(10)、環境活動団体(8)、NPO/NGO等(7)、港湾関係者(2)、中間支援組織(1)、マスコミ(1)、
教育機関(1)、その他(7)、 未回答(1)
地域:広島県(49)、山口県(4)
開会挨拶:環境省中国四国地方環境事務所広島事務所長 加藤 博己氏
海岸漂着物に関しては、様々な団体のボランティア活動等により清掃がなされているが、減らない現状がある。陸域から出されたペットボトルも海に到達し漂流物となる。海岸漂着物の問題は、次世代の子供たちに豊かな自然の恵みを残すと言う意味でも重要な課題であるとの主旨の開会の挨拶がなされた。
基調講演『広島発~海岸漂着ゴミを考える~』
鹿児島大学水産学部教授/漂着物学会事務局長 藤枝 繁氏
太平洋の真ん中、ミッドウェー島は人間80人、コアホウドリ50万羽の島。島には、プラスチックキャップ、カキ養殖用パイプ、ディスポーザーブルライターが無数に散在している。このうち、カキ養殖用パイプは広島発の漂流物であり、遠くはハワイ諸島にまで流れ着いている。
これらプラスチック類は分解されることなく、海を漂い、鳥がイカと間違い誤食し、ひな鳥が死に至ることが多々ある。
~海ごみはどこから来るのか?~
日本近海を流れる黒潮、親潮等に乗り、中国大陸発のゴミもこの流れに乗って日本に辿りついている。これらはライターにより、その発信地を遡ることが可能となっており、信頼性が高い。
瀬戸内海のゴミのワースト20について、一位は硬質プラスチック、二位プラスチックシート・袋の破片、三位発砲スチロール破片、四位食品の包装、容器であり、五位としてたばこの吸殻、フィルターの順となっている。
広島発のゴミは、周防大島に大量に流れ着き、カキ養殖用パイプは行政により買い取られている事例もある。瀬戸内海の各県のゴミの発生と他県からの漂着データによると、広島県は出すばかりで他県からのゴミ流入はゼロ、自県のゴミの21%が県内にとどまっているに過ぎない。広島発のゴミのうち、カキ養殖用パイプ、カキ筏の発砲スチロールが、かなりのウェイトを占める。
~発砲スチロール破片について考える~
海岸漂着物のうち、発砲スチロールは大きな問題を孕んでおり、これは粉々になり、回収が不可能の状態に近づき、更には生態系へ影響を与え、養殖のりに被害を与えている。
鹿児島湾の発砲スチロール対策を紹介すると、リサイクル方法の検討を行い、破砕減容・RPF化の実現及び高耐久性フロートへの転換がある。この結果、10年間で漂着量、不適切管理の事例も半減した。
~今後どうする~
海ゴミの重点回収が必要。回収の促進と流入量の削減の同時対策が重要となる。
パネルディスカッション
コーディネーターに、環境カウンセラーひろしま事務局長薦田直樹氏に招き、議事を進行した。鹿児島大学水産学部教授/漂着物学会事務局長藤枝繁氏には、引き続きアドバイザーとして登壇して頂き、下記のパネリストによるパネルディスカッションを開催した。
《パネリスト》
・環境省中国四国地方環境事務所 首席廃棄物対策等調査官 中野 正博氏
・広島県環境県民局循環型社会課 参事 伊豫 浩司氏
・廿日市市環境産業部 環境担当部長 河崎 浩仁氏
・NPO法人瀬戸内里海振興会 専務理事 田坂 勝氏
・NPO法人自然環境ネットワークSAREN理事長 脇山 功氏
先ず、自己紹介を兼ね、それぞれの立場から海岸漂着物への取組み内容を各自10分程度説明頂き、その後、自由討論形式で進行された。主な内容は次のとおり。
~環境省中国四国地方環境事務所 首席廃棄物対策等調査官 中野 正博氏~
環境省の瀬戸内海漂着ゴミに対する取組みと、国の推進する補助金制度についての最新の情報提供がなされた。
~広島県環境県民局循環型社会課 参事 伊豫 浩司氏~
広島県の実施している海岸清掃活動の実態調査の結果報告及び対策が配付資料に基づきなされた。
~廿日市市環境産業部 環境担当部長 河崎 浩仁氏~
宮島を抱える廿日市市の紹介、漂着物に対する廿日市市の実施状況報告が口頭にてなされた。県の推進しているリフレッシュ瀬戸内事業に参加し、ボランティアによる海岸清掃事業の詳細報告が中心であった。
~NPO法人瀬戸内里海振興会 専務理事 田坂 勝氏~
パワーポイントを活用しての、実際の活動報告がなされ、後半は尾道市百島における清掃活動及び活性化事業の事例紹介がなされた。
~NPO法人自然環境ネットワークSAREN理事長 脇山 功氏~
同じくパワーポイントを使っての事例報告がなされた。特筆すべきこととして、江田島市の航空写真が冒頭紹介され、江田島湾内が発砲スチロールにより、真っ白になっている事実、各浜辺に発砲スチロールが打ち上げられ、海岸清掃の必要性が潮流との関係で説明されたことが挙げられる。
これらの発言を受けて、藤枝教授により、次の意見が述べられた。
・海岸清掃は各地で各団体が行っているが、横のつながりがない。拾うだけで終わっている場合が多い。過去のゴミを拾うだけではダメで、発生を止める働きかけも重要。細く長く続けて行く方策が必要であり、各団体のパートナーシップが問われている。
・大学等の研究者は自分のテーマ、趣味の範囲での活動であり、何かやってくれると期待しない方が良い。
【まとめ】
・海岸漂着物の問題は社会問題として捉える視点が必要
・海ゴミに関しては、生産者、消費者共に互いに遠慮がある。国、県を始めとした行政が一緒になって取り組んでいただきたい。
・次代を担う子供たちに対しての環境学習が重要
・「発信」が重要。現状の認識とともに、活動(イベント)の情報発信を行っていくべきである。
・官、民、業の三位一体が重要。是非とも生産者(カキ業者)の参画を期待したい。
・広島県独自の産廃税を活用した補助金制度の拡充を図りたい。これに向けたネットワーク作りを実施していきたい。
・漁協も参加した意見交換会を開催、横の連携を充実していくべきと考えている。
・海岸漂着物は県の管轄となる。国はGND基金に基づく支援を実施してきた。広島県は手を挙げなかったが、これに代わるものとして、来年度(平成27年度)も環境省としての予算を確保している。
・漁業関係者を敵にすることなく、協力関係を樹立して、広島発のおいしい牡蠣を継続して生産していくべきである。
・本日のシンポジウムで、知ることができた。今後、理解し、行動するまでの道筋を皆で考え、対策を練って頂きたい。
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EPOちゅうごく 編集部(へんしゅうぶ)
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