取組紹介

エリア 山口県

【主催事業報告】第二回 地域循環共生圏の形成促進に向けた視察と意見交換会

主体
テーマ
方法

一般社団法人Spedagi Japanの先進的な取組について

中国地方各県で「地域循環共生圏」に資する団体の皆様と、お互いの活動について視察や情報交換を実施し、更にパートナーシップを拡げていくため、山口市の阿東徳佐地区で先進的な活動をされている「スぺダギジャパン」の明日香健輔氏より全面的なご協力いただいて、視察と意見交換会を開催しました。

【日  時】令和元年12月3日(火)11:00~15:00(10:30~11:00 レクチャー)
【場  所】一般社団法人Spedagi Japan(スペダギジャパン)Spedagi Ato・阿東文庫
      (〒759-1511山口県山口市阿東徳佐上1133 旧 亀山小学校)
【講  師  等】《講師・ナビゲーター》
      一般社団法人Spedagi Japan 阿東文庫 代表 明日香 健介 氏
【参  加  者】18名
    《内訳》所属:行政(5)、NPO・NGO等(9)、地域おこし協力隊(2)、EPO(2)
次  第】10:30~ 今回初参加の方対象の事前レクチャー/明日香 健輔 氏
      11:00~ 開会挨拶/松原 裕樹
       ・オリエンテーション(講師・参加者紹介)
        講師挨拶/明日香 健輔 氏、豊田 菜々子 氏
       ・地域おこし協力隊の阿東地区での活動紹介
        (1)湯澤 慧 氏
        (2)上村 美樹 氏
       ・NPO法人ほほえみの郷トイトイの活動紹介/高田 新一郎 氏
      12:30~ 昼食交流会
      13:10~ 中国地方における地域循環共生圏の形成に向けた意見交換会/松原 裕樹
        (1)オリエンテーション
        (2)Spedagi Japanの取組分析
        (3)地域循環共生圏の形成促進に向けて
      15:00  閉会 インフォメーション
【主  催】環境省中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)

阪神大震災をきっかけに家族と共に阿東地区へ移住

どこの過疎地域もそうだが若者が少ない。12年間生活してきたが、都会との違いにショックを受けることが多かった。山口は補助金ありきで様々な物事が進む。本来補助金は最後の手段だと考えている。地域住民からは「何でこんなところに移住して来たのか」と言われた。

「バンブーバイクを作った先で何をするのか」

昨年のグッドデザインアワードで100選に選ばれ、活動とデザイン性から金賞を受賞。
インドネシアの「チャレンジして自分達でモノづくりを始める」ところに魅力を感じた。
自転車は自動車に比べて法律的にもグレーな乗り物であり、工業製品的にレベルが高い。「日本でも出来ないはずはない」と始めたが、パワーもエネルギーもチャレンジ精神も、インドネシアの足元にも及ばず教わることばかりだった。こんな田舎でも「出来る実例(モデル)」となり、地域に自信を取り戻したい。
自分がやりたい事と合わせて、田舎で若者が元気になれる僅かな光明がスぺダギの活動から見えるので、若者のサポートを続けたい。

この地区の人は、まず否定し責任を問い、成功しても誰も褒めてくれない。これでは若者は何も出来ない。これは大人の責任。ローカルで若者がもっとのびのび自由にチャレンジできる場所と空気が出来れば、田舎にも未来がある。それを指し示すアイコンが「バンブーバイク」で、湯澤氏が来年から自転車を作り始める予定。

山口市地域おこし協力隊/湯澤 慧 氏

東京都渋谷区にある自転車の専門学校で整備から制作設計までを3年間学び、自転車をゼロからデザインして作ることできる。卒論テーマは「自転車と地域資源を活用した地域活性化」。
卒業後、山口市の地域おこし協力隊に就任し、阿東へ移住した。阿東で竹の自転車を作り、それを活用して観光のコンテンツを開発する活動をしている。
インドネシアのバンブーバイクの試乗や、阿東地区をサイクリングして楽しめるイベントを実施。また、実際にインドネシアの制作現場も視察し、竹を切って研究や実験をしている。
廃校カフェの募金箱や趣味で作った竹から削り出したスプーンなど制作。今年ようやく自転車を作るための道具が揃いつつあり、9号線沿いの廃ガソリンスタンドで竹自転車(バンブーバイク)製作のための作業を始めている。

「廃校カフェ」

廃校になった小学校を上手く活用するため、昨年5月に「地域の人に納得してもらえるようにカフェをやろう!」と企画し、山口大学の学生達との協働プロジェクトとして活動を始めた。
・市の管財関係で「修理したらダメ」と言われた廃校の壊れたトイレを勝手に修理。
・選挙で使った看板の廃木材を勝手に利用して網戸も作り、虫除けのために窓に設置。
・近所の方から捨てる予定の木の飾り板を貰い、学生と一緒にカフェの看板作り。
8/12に昭和30年卒の同窓会に併せてプレオープンし、10/19には正式オープン。
当日は50名位の来客があったが、土壇場になり役所から「この場所で販売してはダメ」だと言われ、急遽無料で開催。阿東で生産したジャムを紹介するトッピングコーナーも設置した。
また、歴代卒業生の集合写真(一番古いモノで大正時代)を飾ったところ、当時の自分を発見する人もいて喜ばれた。今後、定期開催出来るかは未定だが活用していきたい。

萩ジオパークサイクリングツアー

11/30(土)快晴に恵まれた中、初心者を対象として開催。当日はバンブーバイクの台数が不足し、十種ヶ峰青少年自然の家からも自転車を借りた。萩のジオパークは、長門峡から徳佐盆地までがそのエリアで、阿東地区も入っている。徳佐駅をスタートして国道を通らずに徳佐内を周回し、途中白松リンゴ園で地球食堂さんのお弁当を食べ、地福分館内の樅ノ木電飾設置作業現場を訪問し地域をPRしながら、長門峡まで全長28キロのルートを全員無事ゴールした。来年はこういったイベントも開催しつつ、自転車を作りたい。
先日、協力隊卒業後について市役所の担当者と相談した。僕は自転車を作る仕事が出来たらと思っている。他にもモノづくりや、旋盤などいろいろな資格を取得したい。

山口市地域おこし協力隊/上村(竹友)美樹 氏

広島県安芸郡府中町出身。山口大学言語文化学科を卒業して、すぐに阿東地区の地域おこし協力隊に着任。当初の活動は、道の駅長門峡と消しゴム版画だったが、現在は、主に「地域の生産品をPR」「消しゴム版画」「阿東文庫」の3つと、その他いろいろな活動をしている。
地元の生産者を取材し、HPやSNSでの情報発信、商品撮影、ポップやロゴの作成を担っている。商品を見栄えよく撮影する方法を独学で学び、バックは雰囲気や状況に合わせて自宅や写りがとても良い阿東文庫で撮影。道の駅長門峡「お食事処長門峡」のメニュー撮影や、ふるさと納税返礼品のパンフレット用写真なども撮影。
SNSは「Facebook」「Twitter」「Instagram」での情報発信や「COOKPAD」でレシピの紹介。
道の駅長門峡のグランドオープンに併せて、市がSNSを管理することになりストップがかかったため最近は更新できていない。「Instagram」が5/14時点で321名、このフォロアーごと全部市役所に取られてしまった。
「COOKPAD」では、道の駅長門峡の売店の商品を使ってレシピを開発。地域のお母さん方から教えていただいた地元レシピなども掲載。一番人気は「お母さん直伝タケノコの手作りメンマ」で、反響を地域のお母様方に伝えると、とても喜んでくれて「もっとしっかり頑張らんといけんね」と嬉しい声を頂いた。
また、喫茶かめやまのSNSを立ち上げ「Facebook」と「Instagram」で情報発信している。

ラベル用ハンコなども作成

10歳から14年間消しゴムを掘っている。消しゴム版画は、消しゴムハンコより大きめの作品で、地域の景観などの作品を通して阿東、山口をPR。消しゴム版画で掘った作品をデータ化して大きめに入稿し、長門峡鳥観図の手拭いなどの商品開発や作品展示も実施している。阿東東中学校の美術の授業で消しゴムハンコの指導や、阿東図書館祭り、阿東地域交流センター嘉年分館、12月8日には国際美術村でポスコン、光市の地域おこし協力隊との合同企画で空き家など、様々な場所でワークショップを開催している。地域おこし協力隊卒業後は、今でも副業でやっている消しゴム版画作家としての活動を続けたい。

NPO法人ほほえみの郷トイトイ 事務局長/高田 新一郎 氏

同じ阿東で「徳佐」の隣にある人口約1200名位の「地福」という公民館区で、「ほほえみの郷トイトイ」という地域拠点を運営。「トイトイ」というネーミングは、地福地区でずっと守り続けられている、毎年1月14日藁馬を使った「トイトイ」という国の重要無形民俗文化財に指定されている伝統行事が由来。
平成22年2月に地福地区に唯一あったスーパーが閉店した。人口が減少していく今の現代社会において、一つの課題に対して対処的にアクションしてもまた新しい課題が発生し、そのうちに高齢化が進み人口が減少する地域では未来が描けない。ネガティブな思考の結果、「お店が無くなったのは誰のせい?」行政が悪いとか、○○が悪い、誰かが悪いという「人のせい」になっていったのが当時の地福地域だった。

「住民の皆さんに意識改革をしてもらおう!」

当時たった一つのお店が無くたったことで地福地域には、諦めにも近い感情が生まれていた。「穴が開いたから穴を埋める」という対処的なアプローチから、穴は今から開いていくだろう。それを受け入れた上で「なぜそういった課題が出てくるのか」をちゃんと見極め、原因をしっかり掘り起こし、人口は減少しても地域が安心して暮らせるような「そもそもの課題」を解決するという仕組みづくりをスタート。課題ではなく「不安を安心に変える」シンプル思考で、その為に地域に必要なものは何だろう?と考え、一つの仮説を立てて取組んだ。
・地域住民の拠り所になるような拠点を地域の中に生み出す。
・自分たちが地域課題を解決するという事を主体的に考えれる。
・安心して暮らし続けることが出来る故郷を作ろう。

「地福ほほえみの郷構想」

地域住民一人一人が、自分たちの住んでいる地域の未来に責任をもって主体的に関わることが必要。「誰かだけがやる」のではなくて、「今から自分たちの地域で地域の皆さんに何をしてもらいたいか」をイメージしてもらい、将来ビジョンの明確化と共有をしっかり行った。
・閉店後一年半以上地域では話が迷走していて何も出来ない。
・平成23年11月に将来ビジョンを提案しキャッチフレーズを決定。
・翌年1月2月には、21ある自治会全部に説明して歩く。
・「開設支援金」という僅かな寄付を募って歩く。
・地域住民に3月31日だと腹をくくっていただく(人間お尻を決めないと動かない)。
・平成24年の3月31日にオープン。

<POINT>
・みんなでチャレンジしようという覚悟をもてるかどうかが一番大事。
・地域の未来は、そこに住む我々が主体的に描いて責任を持つべき。
・「誰かが何かを補助してくれる」とか「助けてくれるからやる」ではない。
・自分達が出来ることで一歩踏み出せるかどうかが、出来るか出来ないかの境目。
・正しい方向に一歩踏み出すことが出来れば、後から行政の支援が付いてくる。
・「お金が集まったらやろう」「出来る準備が出来たらやろう」ではずっと出来ない。

地域の未来を実現するために、みんなが協働できるプラットフォームをつくるのが、「ほほえみの郷トイトイ」の理念。

詳しくはこちら⇒ NPO法人ほほえみの郷トイトイ http://jifuku-toitoi.com/

地域循環共生圏の形成促進に向けて【グループワーク】

世界的に合意形成された目標もあるが、これを達成していくための価値観や地域の目標は様々である。SDGsで有名な下川町も分析すると「環境」「社会」「経済」が好循環しているという図が出来る。持続可能な社会形成のためにも、三つの面に同時にアプローチする事が大事。
前半はSupedagi Japanの取組について「環境」「社会」「経済」が好循環している要素やノウハウ、その要因とは何かという事を話し合いたい。

【環 境】
・地元産の竹を使う事で地域資源の活用ができる。
・自分たちが作る事で修理が出来たり愛着がわく。
・ゴミが出ない。
・自転車に乗ることでCo2削減や健康維持につながる。
・竹を利用しているので竹林が整備されて生物多様性が保全できる。
・将来の日本の健全な森林の育成や管理、森林整備につながっている。
・竹害を知るきっかけにもなり、里山も活かされるのではないか。
・伐採した竹をどこでどう活かすかが山口県の課題。
・全般的なエコロジー的な意識を高めることにも尽くしているのではないか。
・大企業がまねできないような取組。

【社 会】
・海外の情報発信や世界とのネットワークが広がり、地域に人を呼び込む仕組みづくりからチャレンジしている。
・阿東の過疎地域で事業をやっているという結果、地域が国際的に認められ、国際交流になっている。
・地域内外の交流、若者が地方に興味を持つきっかけになる。
・地域のガイドをすることにより地域への関係人口が増加し、まちづくりのコンテンツになっている。
・拠点づくりという効果があるのではないか。
・社会をつくるきっかけにもなっている。
・暮らしや価値観の提供。
・既成事実を作ったという話もあったが、一番初めから理解を得られる訳ではない。
・見える形で見せながら共感型を作った集落や地域の現れもあったのではないか。

【経 済】
・地域の商品を紹介することにより、地元の商品の売り上げがアップする。
・地域おこし協力隊が入ったことにより、新たな仕事や働き甲斐が創出する。
・阿東に来ないと乗れない。自転車を売らない事で観光客がアップし、地域内にお金がおちるという効果がある。
・ツアーと自転車生産の組み合わせることにより、地域経済への波及効果が拡大する。
・新しい価値の創造により、ストーリーや技術に共感を得て推進出来る。
・自転車を地域財産アイコンとして使用する選択をしている。
・自転車のビルダーにお金が入る仕組みづくりが出来るといい。
・売らない前提でレンタルサイクル。
・体験ツアーパックとして商品化。
・一つの拠点や活動がきっかけで、地域のプレーヤーの商いにも波及効果がある。

アドバイザーの豊田氏より

私は「またね」という言葉を大事にして仕事をしている。「またね」という言葉が出るという事は、その場が楽しかったり、次にもっとこうしたいという気持ちがあるから。だから子ども達が帰る時に「またね」という。
今日は、時間も足りなかった方もいらっしゃるかもしれないので、ぜひEPOちゅうごくに「次の場をもう一度」とか、「また来たい」と言ってもらえたら良いと思う。

「今まではこうだったからダメ」というのは良くないと思ってる。「へんちくりん」という言葉は、その地域で関わっている人や竹林という場所が、どんどん良い方向に変わるといいなという思いが込められている。地域や社会、人も変化していく時代なので「変化」ということを恐れずに、その時にあった場所ややり方で、人がそこで生きていけたらよいと思う。

「サステナブル」という言葉が成熟してきている

今、エネルギー的にも世界経済的にも「待ったなし」の状況になっている。危機感を持ちながら「今後地域でどうやって幸せに生きていけるか」の一つのきっかけに竹の自転車と出会ったという意味付けを持ってツアーを始めている。単に観光ツアーとは違う。自分で自転車を作って乗って頂くというワークショップもしながら、ツアーもやりたい。最終的には、竹を切るところからやって頂きたい。
竹という素材は、かつて日本では身近な建築素材だった。昭和30~40年位までは身近に利用されていた素材のはずなのに、今や全く顧みられなくなっている。全世界的に見ても、こんな国は日本だけではないのかと思うくらい竹に対して冷たい。理事の益田氏は、この件で世界中を回っている。

益田氏:1980年代から竹で、パナソニックではスピーカを作るなどモノづくりをしている

世界中のバンブーは、赤道直下のベルト地帯に大量に生えている。例えば、南米のコロンビアでは竹を使って膨大な体育館のようなドームを作っている。インドネシアでも、7階建てのビルが建っている。そのくらいいろいろな技術がある。
一番最近では中国へ建築家と二人で行ったが、下を向いて帰ってきた。中国は無尽蔵にある竹を本格的に使い始めている。建築資材として集成材のパネルを作り、そのパネルで中高層のビルを建てる技術を開発しており、その為の膨大なプラントを作っている。竹は次々生えてくるので、正にサステナブルな素材。
台湾では、舌を巻くような工芸品や実用品を作っている。そのための研究所もあり、台湾の文科省の副大臣はそこの所長をしていて、台湾は今竹を一番大切にしている。
次に竹を大切にしているのはインドだと言っていた。日本はもうダメだと言われれた。そんな風に今、世界中で注目されているバンブーいわゆる竹に対して、日本はもう乾燥技術や加工する技術さえもどこかへ行ってしまった。日本は何をやっているのかというと、宇部市が典型ですが、チップにして燃やしてバイオマス発電。そうすると40数年間石油を使わなくていいと。でもその後どうするんですかという話。あるいは全部集めて紙にしてしまう。素晴らしい素材なのに無くなってしまう。
竹でいろんなものを作る新しい技術や工業が、阿東から生まれて、日本中で始まっていけば面白いと思いスぺダギの活動をしている。

この記事の発信者

西村浩美(にしむら ひろみ)

コーディネーター

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