取組紹介

エリア 広島県

【主催事業報告】雑誌「地域人」編集長に聞く地域循環共生圏 地域を幸せにするローカルSDGsの具現化

主体
テーマ
方法

「雑誌「地域人」編集長に聞く地域循環共生圏 地域を幸せにするローカルSDGsの具現化」

近年『 SDGs 』 という言葉が浸透し実際に取り組む企業や団体が増える中、行き詰まり感を訴える声も多くなっています。
より活発な地域の持続可能性に寄与する地域内循環を生み出すためには、今地域が抱えている課題を正確に把握し、地域内の物的・人的資源を活用した取組のノウハウ、効果的な情報の発信が「カギ」となるのではないでしょうか。
常に時代の先端を読んで、世間の「空気」をかたちにしてきた渡邊氏と、 ローカル SDGs の地域づくりを研究者の立場から実践する岩淵氏 による対談から、地域循環共生圏(ローカルSDGs )の創造、具現化とはどのようなものか、促進に向けたポイントについて考えるためのセミナーを対談形式で開催しました。

【日 時】
2022年12月6日(火)14:00~15:30(または16:00)

【場 所】
合人社ウェンディひと・まちプラザ ギャラリーAB(広島県広島市中区袋町6−36)

【参加者】
17名

【講 師】
・渡邊 直樹 氏(雑誌『地域人』 編集長 大正大学地域構想研究所 客員教授)
・岩淵 泰 氏(岡山大学 地域総合研究センター 准教授)

【主 催】
環境省 中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)

【プログラム】
13:00~     オープン(プレ対談、映像投影、名刺交換タイム)
14:00~14:10 開会
14:10~14:30 講演1 渡邊直樹氏
14:30~14:50 講演2 岩淵 泰氏
14:50~15:20 対談(渡辺直樹氏+岩淵泰氏)
15:20~15:25 質疑応答
15:25~15:30 閉会の挨拶
15:30~16:00 名刺交換・参加者交流

「持続可能な地域を実現するためのメディアだから出来る効果的な情報発信と役割とは?」
/渡邊 直樹(雑誌「地域人」編集長)

<取材について>
・雑誌「地域人」について、取材のノウハウや心掛け、環境省との関わりについて、6周年記念号の沖縄、奄美、徳之島、西表島が世界自然遺産に登録された記念の特集では、自然環境を守りながら地域経済を活性化し、経済やビジネスにとってもチャンスになっていると紹介されました
・次号のテーマ「高等専門学校と高校」を例に、まず電話とZoomで打ち解け、ある程度現地を理解した上で訪問し、朝から晩まで時間をかけて濃密な取材をしますが、移動中などで移住者達とプラス面だけでなくマイナス面についての話をする事で、いくつかの視点がこれから先の企画のヒントにもなるなど、直接現地に行くことの大切さについて紹介されました。
<風の人と土の人>
・神山町を例に、外から来た人のことを風土に合わせる「風の人」、その土地に住んでいる人の事を「土の人」という言い方があり、「土の人」は代々受け継いだご先祖様の土地を大切にしたい思いがあります。「風の人」が受け継いだ土地を次の時代まで上手く活用することで、信頼を得ています。
<「をちこち」の視点>
編集長として携わった国際交流基金の雑誌「をちこち」は、漢字で「遠近」と書きます。「あちらとこちら」で、時間軸では、現在があって過去と未来を行き来する「過去と現在と未来」。空間軸では、この土地と外国など他所の土地。その両方の視点をいつも持つことが大切です。
日本は今世界から一周遅れだが、今まで地域課題あるいは日本の社会課題にちゃんと向き合い解決することが出来ていれば、世界をリードすることになり、ビジネスチャンスにもなっていたのではないでしょうか。自然環境を守る上では、伝統的にも思想的にも「山川草木悉皆成仏」が基本ベースにあります。今ある伝統とは明治以降の近代以降しか視野にないですが、もっと何千年も前の話など日本の本当の伝統も視野に入れた上で「をちこち」というのが大切であると紹介されました。
 

「『環境・社会・経済・教育』地域共生圏を実現するための地域づくりとは?」
/岩淵 泰(岡山大学地域総合研究センター 准教授)


<ローカルSDGsとは>
・住みやすさや幸せの条件を共有することが「ローカルSDGs」になる。日本の田舎は、外国人留学生から見ると人口減少で大変だが生き生きしているそうだ。地方創生など日本の人口減少対策を中心に据えた移住や産業、子育て支援が中心の政策などの対応を外国は注目しています。
・フランスの町を例に、公共交通と公共空間が豊かであることも住みやすさを考える上のひとつのテーマであり、食材はその季節の旬のものが販売し、必要なだけ個別で購入して食べることができる。それこそがエコロジーであり優しい生活であると紹介されました。
・もし10年後に学生から「ローカルSDGsって何だったのか」と質問を受けたら、
「ローカルSDGsという言葉を通じて、いろんな企業が地域に関わるようになった。」
「市民会議など様々な集まりでまちづくりの事を話し合うようになった。」
「地域の資源を大切に使おうと言いだした」と3つ答える。
<真庭市の事例>
・「真庭ライフスタイル」という言葉で、市長のリーダーシップもあり、エネルギーもあり、円卓会議もありというような、地域の豊かさは何なのかをみんなで考える市民総参加型のSDGsを目指している。円卓会議等で市民社会の声やアイデアが地域に反映され、この両輪がまちづくりを動かすようになってきていること、「GREENable HIRUZEN(グリーナブル ヒルゼン)」や、株式会社ロフトワークとの連携を例に、いろんな地域の題材をビジネスチャンスに繋げていること、「SDGsの主体は市民の皆さんです」と感じるSDGsを体験・体感することが大切なポイント。
<地域循環共生圏を実現するための地域づくりとは?>
・地域資源を最大化するには、市民がお互いに知り合い、語り合い、助け合い、活躍することで特色のある地域づくりも大切である。次の世代を担う若者の声が地域づくり・まちづくりに反映されにくい状況が問題で、持続可能であるか否かは、そこに住民自治が機能しているか否か。私たちの声が入るから持続的になる。共生を大切にする事と、風通しの良い地域を創っていかなくてはならない。サステナブルな生活を楽しむ事。自分の趣味の時間がかけられる地域が、ローカルSDGsであり、地方創生であり、まちづくりに繋がっていくのではないか。地域循環共生圏を実現するための地域づくりは、それぞれの地域でカスタマイズして、長期的に頑張っていくしかないと締めくくった。

講演講師による対談
~対談の内容は以下のとおり~

沖本:渡邊先生には。最近の取材の事例の具体的なお話や、取材でどういうことが重要なのか、例えば「をちこち」というキーワードが出てきた。岩淵先生からは、ローカルSDGsはどういうことなのか、地域資源の有効化や、企業、市民の参加が大事だとお話いただいた。まずは、参加者の方に事前にいただいていた質問を投げかけたい。

<メディア関係の質問>
沖本:ローカルテレビの役割とはどういうところにあるのか。地方でもできる効率的、効果的な情報発信方法とは?

渡邊:従来ローカルメディアは、まだ水面下にある地域内の若者の将来的に大きくなるのではないかという現象を掬い取り、それをいち早く出す事ができるのが強み。嗅覚に近いのかもしれないが、そういう地道な現象や将来に向けて大きくなるものに対して、どう捉える事ができるのかが大切。テレビについては、従来からのオールドメディアの調査機能や調査報道とか校閲だとかをキチッとしておく事が大事なのではないか。
・歌舞伎などは昔から見巧者(見るのが上手な観客)がいることにより役者も育つように、作家や書き手も読み手が良い人でないと育たない。大手の出版社や大手の書店は、目先のことに囚われがちだが、地方の小さな書店が交流の場となり読み手を養成する。そういうインディペンデントなものに可能性を感じている。それが繋がっていって互いに励まし合いながら良さを活かしていくと、ひとつの地方創生になるのではないか。「地域人」もローカル書店の特集をしている。

<企業としての地域の繋がり・役割とは>
沖本:マスメディアが気付けないような地域の若者や、地域の人を発掘してくるのが重要な役割ではないかという事をお話しいただいたが、これは岩淵先生が言われていた企業の参加という企業の大きな役割のひとつなのかと個人的には思った。
・他にも質問が来ていた。企業としての地域の繋がりとか役割とはどういうところにあるのか。メディア以外にも地域には企業が多くあるが、その役割はどのようにお考えか?

岩淵:地元に50年100年とあり続ける企業は、それだけで地域のまちづくりに大きな良い影響を与えている。岡山や広島などでも人口減少という問題が出てきた時が、市民活動や、企業活動だけで解決できない。気候変動もそうだが、個人で解決できる話はそんなにない。地域の総力でどうあるべきかという段階になってきた今、企業が地域にもう一度目を向けるのは大きなビジネスチャンス。これまで日曜日位しか地域の活動は出来なかった会社員が、これからは、会社員でも一市民として地域活動が出来る働き方も、企業の人達と一緒に考えられる時代になってきた。地域の企業がSDGsに対して関心があることが一番大切で、それをどう継続するかだと思う。良い所を積極的にお互い評価し認め合い、良い所を磨いて作っている製品が良い町の個性、ブランドになるということを企業との連携の中でやっていきたい。

渡邊:好事例に挙げられる地域は、多様なステークホルダーが寄って集って地域を良くしようとしている。「地域人」でも地方自治の事を取り上げたことがある。法律上は地方で出来る事はたくさんあるが、特にコロナになって、いつの間にか何でもお伺いをたてて地方で決定しない傾向があるが、それが地方自治の成り立たない理屈。
若者で議会に興味のある人は結構いる。しかし、仕事をしながら議会の参画は難しい。法律で会期など変更するなど、様々な立場の老若男女が地方政治や自治に参画できるように変えていかなければならない。

岩淵:財政難で、良いアイデアに国の予算を充てるようになってきた。私たち地域が良いプランを作れば、直接良いものを造る事が出来るという側面がある。
政治に関しては、世界的な傾向で投票率が落ちているが、それは直接何かをやりたいという人が増えてきているから。政治というルートに乗らず、自分達で直接何とかしたいという動きが強まっている。デモクラシーという側面で考えると、議会そのものが私たちの地域の縮図であるべきだが、男性が多く女性が少ない、高齢男性が多いとなると、それが地域の縮図にはなっていないという問題がある。多様な人がお互いリスペクトして推進しなければならない。政治に関心はないが、まちづくりに関心があるという人もいる。それは地域に寄りけりかなとも思う。

<若者の参画について>
沖本:岩淵先生の話の中に、若者参画の話が出てきたが、若者の参画について渡邊先生は?

渡邊:隠岐の島の海士町にある隠岐島前高校は、15年くらい前に人口減少のため統合廃合寸前なり、このままでは町自体の活力もなくなってしまうと、一躍チャレンジして高校の魅力化構想に立ち上がった人達がいる。高校の先生だけではなく、民間から来た魅力化のコーディネーターがいて、公営塾の隠岐の国学習センターや、島外から来た学生には寮があり、教員室にもそれぞれの担当者の席があって、密に連絡をとりながら分担することで成功し、それが今でも続いている。今でも全国から視察やメディアの取材が多いが、共通していたのは、共に失敗を恐れない、どんどんチャレンジさせていること。隠岐島前高校の今年のテーマは「失敗をみんなで称え合う学校」。
・集客の悪かった地域のイベントや学生の集まる行事の企画を、大人ではなく学生達自身がすることで盛況となり、この成功体験が自信に繋がり責任感も出て、更に一生懸命やる。これが上手く循環している地域は、自主的に活動できる子ども達が増えていく。本当は中学校や小学校位から必要なのではないだろうか。そんな地域が全国的にも増えており、その地域出身で外資系企業やコンサルで活躍している若者が、20代後半から30代になると改めて社会課題を解決する事に目覚めて起業するという例を、この5~6年随分見たり取材したりするようになった。という事は、まだまだ暗いことばかりではない。

岩淵:これほど若者への視線が熱くなったことはないのではないか。地域には、就職や大学進学で18歳以降はいなくなるという辛さがある。今の地方の様子を見ていると、定住とまではいわないが、何某かそこで関わってくれる20代の若者や10代の若者がいるだけで、地域は結構踏ん張れている。可能な限りまちづくりしながら若者を育て継承していく努力が必要だが、ありがたいことに今の若者はそのことに対してとてもオープンな気がする。大学生は、まちづくりとかをやってみたいけど関わり方がわからないと言う。また、大きな変化として高校生でとてもアクティブに動く子が多くなった。学校現場での新しい実践的な教育が花開いているところだが、逆に学生たちが地域に出て失望してしまったという事例を作らないようにしないと、思ったのと違うじゃないかと思われると辛い。教育の現場と地域との日常的な話し合いや交流により期待ができるのかなと思う。
渡邊先生の雑誌「地域人」が地方の活動をフォーカスしてくれるのはありがたい。地方をまんべんなく読める雑誌は飛行機の中の雑誌くらいではないかと思っていた。雑誌を制作する面白さだとか大変さを教えてほしい。

渡邊:硬い雑誌から柔らかい雑誌まで何でも携わってきたが、まさか「地域人」を出版するとは思わなかった。昨今、総合雑誌は出来ないと言われているが、一年半位経過し「もしかしたら「地域創生」に落とし込めれば、総合雑誌ができるのではないか」と思った。諸事情で3年目から広告が非掲載となり、広告主方面には気を使わずに制作出来るようになったので、今の雑誌「地域人」が一番面白い。三年前にはSDGsの特集をしたが、今年7周年号は「地域とケア」。その前にも「障害者と共に生きる」というテーマで、支え合い助け合う地域共生社会といった例を色々出しながら議論も掲載している。
最近「農福連携(農業と福祉の連携)」といわれ、日本の伝統職人の手業が、実は障害を持っている人や、ある種の病気を持っている人達にはとてもシックリくるとのことで、実際に伝統を継いでいる人達もいる。
以前水俣の特集で、当時水俣病患者に最初に謝罪した吉井元市長と話をした。吉井氏は、水俣市をいち早く環境首都にするため、ドイツ式の細かいゴミの分別や、農林水産業の向上、温泉の利活用など、住み良いまちづくりを目指しており、そんなやりかたもあるのだなと思った。多様な人達がいる中で、ようやくウェルネスツーリズムや、ウェルビーイングなどを、環境と共にキーワードとして推進する自治体も少しずつ出てきているので、そういった特色のあるまちづくりも見ていきたい。

<成果と課題>

・企業や行政の参加者から地域ブランドの商品化の模索や広島市版の円卓会議など、新たな気付きから今後の活動実施に向けた前向きな声もあり、更なる地域の活性化に向けた新たな動きの創出が期待される。

・経済レポートの記者より、当日名刺交換をして参加者と繋がる事ができ、取材に行って新たに良い繋がりが出来たとお礼の連絡があるなど、参加者同士、参加者と講師と、講師同士を繋いだことで、今後ローカルSDGsの更なる発展に向けて新たな繋がりを創出するきっかけ作りが出来た。

・少人数ながら、企業、行政、NPOなど地域循環共生圏に関わりのある多様性が参加者にあったのは、大きな成果であった。

・テーマがローカルSDGsであり、ローカルな現場の知識が豊富な講師からの情報提供であるため、会場を広島市内中心部ではなくローカルな場所で、地域の実践者も含めて畳の部屋で対談するなど、場の雰囲気づくりに工夫の余地はあった。

・地域で実践するヒントを得るための落とし込みの部分について、自分事化するための方法論を明確にするなど、EPOがもう少し絡んで参加者と講師を繋ぐための動きが必要であった。

・伝えようとしたことが聞いた人の解釈に委ねられた感があるなど、方法論にミスマッチが起こっていた。チラシの段階での呼びかけ方や、目的の明確化が今後の課題である。

 

この記事の発信者

西村浩美(にしむら ひろみ)

コーディネーター EPO歴 8年目

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