取組紹介

エリア 山口県

【主催事業報告】第一回 地域循環共生圏の形成促進に向けた視察と意見交換会

主体
テーマ
方法

一般社団法人Spedagi Japanの先進的な取組について

中国地方各県で「地域循環共生圏」に資する団体の皆様と、お互いの活動について視察や情報交換を実施し、更にパートナーシップを拡げていくため、山口市の阿東徳佐地区で先進的な活動をされている「スぺダギジャパン」の明日香健輔氏より全面的なご協力いただいて、視察と意見交換会を開催しました。

【日  時】令和元年11月5日(火)11:00~15:00
【場  所】一般社団法人Spedagi Japan(スペダギジャパン)Spedagi Ato・阿東文庫
      (〒759-1511山口県山口市阿東徳佐上1133 旧 亀山小学校)
【講  師  等】《講師・ナビゲーター》
      一般社団法人Spedagi Japan 阿東文庫 代表 明日香 健介 氏
【参  加  者】15名
    《内訳》所属:行政(6)、NPO・NGO等(5)、地域おこし協力隊(2)、EPO(2)
次  第】11:00~ 開会挨拶/事務局長 松原 裕樹
      (中国環境パートナーシップオフィス・中国ESD活動支援センター)
       ・オリエンテーション(参加者紹介)
       ・バンブーバイク体験ツアー(田園と湧き水を巡って)
      12:00~ 昼食交流会
      13:00~ SpedagiおよびSpedagiAtoについてご紹介、意見交換
      15:00  閉会 インフォメーション
【主  催】環境省中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)

開催の趣旨と開催までの経緯

先般策定された「第五次環境基本計画」で、SDGsの実現に沿って、各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮され循環していくシステム「地域循環共生圏」の創造による持続可能な地域づくりを通じて、環境で地方を元気にするとともに、持続可能な循環共生型社会の構築を目指し、それぞれの地域の特性や事情を踏まえ、小規模でも環境社会・経済が循環する社会・地域を創ろうというのが、環境省の柱となっています。

今回参加の中国地方各県で「地域循環共生圏」に近い取組をしている団体の皆様方とパートナーシップ形成するため、お互いの活動について視察、情報交換を実施し、さらにその輪を拡げていくために、先進的な活動をされているスぺダギジャパンの明日香氏にご協力いただいて、「地域循環共生圏」の考え方でノウハウや課題を含めてしっかり交流して学び合う場として、また今後の活動に役立ていただければという主旨で開催しました。

<理解する> 視察を通して取組の特徴や可能性を理解する。
<整理する>地域循環共生圏の形成促進に向けた課題や支援策を整理する。
<学びあう>交流や相互啓発を通してノウハウを学びあう。

「バンブーバイク造りの経緯紹介」

一般社団法人Spedagi Japanは、竹で自転車を造っているので自転車関係の団体なのか?阿東は竹で困っているから、その問題を解決するために竹で自転車を造っているのか?と言われるが、実はどちらでもなく、たまたま自転車で、たまたま竹だった。インドネシアで、ソーシャルデザイナー達が地域おこしのために立ち上げたプロジェクトと運よく出会える機会があり、そこと一緒にやり始めた事の一つが自転車造りだった。

たまたま萩市などに竹を集成材にして家具を造るTAKE Create Hagi株式会社があり、初期にTAKE Create Hagiさんから材を分けてもらい試作もしたが、なんと萩市の竹は一本もない。殆どが阿武町と阿東の竹だという事を知り、これは「灯台元暮らし」だなと気付いた。
阿東は寒暖の差が激しく、新潟の魚沼と同じくらいの気象条件の地域で、たまたま竹の産地だったといった感じで、やっていることがたまたま合致したといった流れであった

自転車の団体だという言われ方をするし、違う事をすると「なぜ自転車を造る団体が別のことをしているのか」という言われ方もする。
この場所は14年前に廃校になった小学校で、元々は古本の図書館でもあるこの場所を拠点に、意識して活動してきたわけではないが、サステナビリティいわゆる循環型経済や循環型という言葉と合致する部分があると感じて、上手く絵を描いたりしたいと思い活動してるが、解り難いとよく言われる。

まずは、実際に自転車を試乗していただき、この地域の空気を吸っていただきたい。
バンブーバイクツアーは課題山積で、活動しながら一つ一つ課題を潰していっているのが現状であり、モデルになるかどうかはわからないが、皆様よりアイデアやご指摘をいただければ有難い。

と、明日香氏よりスペタギジャパンとバンブーバイクツアーについて簡単なご紹介をいただき、実際に竹で造った自転車で阿東地区をサイクリングを体験しました。

大阪から移住者として阿東地区にきて、どんな暮らしをしているのか

本業はITの会社を経営しており、日本初のコミックビュア等のシステムや、パイオニアと協働で自転車に搭載できるポタリング用のナビ等を開発。今は、地元の団体とお年寄りの見守りサービスや、主力の仕事は手術器具の管理システムを開発している。

当時、大阪に事務所をもって10名位の社員を抱えていた。昔から田舎で生活したい思いがあり、2007年にオジからの提案があり、12年前の2007年3月大阪から阿東地区の築1900年の古民家に移住し、本店も大阪から山口に移し、社員の方々にはサテライト契約の社員になってもらった。移住4年半で水害に見舞われ、国道に近い今の家に転居した。

最近、移住者の実例として講演の依頼を県から受けたりする。都会に疲れ、安らぎを求めて田舎探しをしたり、薪割りや薪ストーブに憧れて移住を希望している人には、基本的にはお勧めしないという話をしている。こんなに辛辣な人間関係の田舎に来ると、仕事も含めて恐らく生き残れない。

地域でサスティナブルな事をする一つとして、どう稼いで生活していくのかというのは、絶対に避けられない話。例えば山口市の中山間地域で子育て世帯が生活するためには、
①自分で仕事をつくる。②自分で仕事を持ってくる。

この地域の方々は皆「ここには仕事がないから」と言う。だから子ども達は成長すると、地域外に出ていってしまうのが当たり前だと言う。仕事をつくるとか持ってくるといった発想も無く、なかなか理解が得られない。しかし、実際私は大阪から移住してこの地で生活し、子育てもしている。だからモデルになるのではないか?

今は自称「複業家」(中村龍太の受け売り)と名乗らせていただいている。本業(IT)、副業(薪ストーブ販売)・営農法人で米や野菜作りの手伝い(米や野菜の現物支給)、家業(地元の老舗和菓子屋を妻が継承)、事業(阿東文庫・Spedagi Ato)。
一つの仕事も出来ない者が、いくつもの仕事に手を出して何ができるのかと、お叱りの言葉を受けることもあるが、基本的には本業で家族を養っている。その延長線上でご縁があって様々な活動をしている。恐らくこれからの若者は、一つの事だけで生きていけるほど甘い時代ではない。人生はリスクヘッジしながら生きていかなければならない。江戸時代に「いっぱしの男」と言えば、本業を持ちながら社会貢献活動をしている男の事だったらしい。

なぜスぺダギみたいな活動をしているのか

Spedagiは「Speda=早朝」「pagi=自転車に乗る」で早朝サイクリングの意味の合成語。
インドネシアから来日したテマングンで活動する若者は、皆10代~20代。彼らのフィールドでは、石畳の道や、デザイナーが描いた絵だけを参考に、竹製の建物も彼らが手作り(日本から技術を学んでいる)。市長や警察署長も出席する竹林会議も実施。地域通貨もある。このような活動の実施は行政では難しい。やはり、民間のエネルギーでないと出来ない。

彼らの活動を参考に、2年半前に「自転車を造ろう」と阿東地区での活動をスタートした。しかし、現状はまだ殆どがインドネシアの自転車(バンブーバイク)を使用している。試作モデルとして阿東で切った竹を利用した自転車もあるが、まだ課題を解決しきれてない所もある。

来年くらいには何とか阿東のモデルを造りたい。今はまずバンブーバイクツアーを始めているが、来年を目途に子ども達や家族連れを対象に、自分で自転車を組んで、その自転車で阿東地区をサイクリングといった体験ツアーの実施を目指している。

「何が課題で、何を私たちが求めているのか」というと、やはり「若さ」と「人材」。ここに来てもらって、知ってもらって、聞いてもらって、共感していただいて、「若い人がここへ集まる」という流れを追々はつくっていきたい。

そのための一つとして、私は「たかが自転車、されど自転車」言っている。自転車は、実はとても大変な乗り物であり、造り物である。とても精巧に出来ており、とてもセンシティブである。それでもインドネシアの若者は、誰もプロがいない中で一から自転車を造り上げた。
自転車は、法的にとてもグレーな部分が多い。そのような中で、今の若者に向け「自転車って買うものじゃなかったの?」「自分で造って組み立てて乗ってもいいの?」という提言を含めて、楽しいことがここで出来る一つのきっかけになれば、大きな意味を成すと思う。

事故のリスクも含めて、日本で自分たちが造った自転車に乗るには、メカニック的にも乗り越えなければならない課題がある。

これから紹介する湯澤君は、東京サイクルデザイン専門学校という3年制の専門学校を卒業して、様々なご縁があり、ここに来ていただいている。彼はCADで図面をひいて、一から自転車をデザインして造ることができるエキスパートの一人。

活動紹介:湯澤 慧 氏(山口市地域おこし協力隊)

地域おこし協力隊としてのテーマは「自転車と地域資源を活用した地域活性化」で、Spedagi Japanが受け入れ先になっている。阿東産の竹で自転車を造るために、いろいろ活動している。先日、この場所で山口大学の学生達と共同で「廃校カフェ」を開催するなど、廃校活用にも最近力を入れて活動している。

自転車をゼロから作るというのをイメージするのが難しいと思うが、図面をPCで作成するところから始めて、木などを利用し、各パーツを溶接などすると、前に置いてあるような自転車ができる。水色の部分もすべて造っている。各パーツを購入し、デザインに併せて削るなどして加工し、自転車に合うような鞄も雰囲気に合うようにデザインして造っている。
Spedagi Atoの「竹の自転車を造りたい」という思いに共感し、こういった経験を活かして、家族でワークショップが出来て、組み立てられるような竹の自転車を制作している。

阿東地区は、本気で自転車に乗って走る人々にとっては、体力の限界に挑戦するルートの通過点となっている。私たちがターゲットにしているのは、阿東の美しい景色を見ながら楽しみながら安全に走れる自転車で、自転車が好きというよりは景色を楽しむのが好きな人、いろいろなことをやってみたい人達。そんな人達が「いいな」と思えるような自転車を開発したいと思っている。

次回に向けて

今日は全体像を体験して理解するという趣旨で実施。次回は深めたり、意見交換したりする予定。環境省の「地域循環共生圏」をしっかり理解して進めるためには『SLOC』のような要素を整理して、同じような取組をしたい人が基準にできるようなツールを支援に利用し、中国地方に広めたい。そういう意味でのポイントや、もっと知りたいことをまとめたい。

※『SLOC』S=small、L=local、O=open、C=connect。
阿東地区にも来たことがあるイタリアのエツィオ・マンズィーニ氏が提唱しているサスティナブルの世界的な基本ワード。サスティナブルな活動や行動やデザインをするには、この4つのキーワードがこれから外せない指針の一つでもある。明日香氏は、このワードの最後に『D』=diversityをつけないかという提案をしている。

この記事の発信者

西村浩美(にしむら ひろみ)

コーディネーター

トップへ