取組紹介

エリア 岡山県

【主催事業報告】光害セミナー「持続可能な社会のために~光との付き合い方~」

主体
テーマ
方法

光害セミナー 持続可能な社会のために~光との付き合い方~

【日  時】平成27年8月30日(日)13:30~16:30
【場  所】中国銀行岡山駅前支店 会議室(岡山市北区本町2-5)
【講  師  等】《講師》
      ・ 柳澤顕史氏 (自然科学研究機構 国立天文台岡山天体物理観測所助教)
      ・ 山本晴彦氏 (山口大学農学部教授)
      《司会》
      ・ 内藤はま子氏(EPOちゅうごく地域実行委員・OPECA理事)
【参  加  者】58人
【次  第】12:30- 開場・受付
      13:30- 開会挨拶 環境省中国四国地方環境事務所環境対策課 課長 原田幸也氏
      13:40- 第1部 講演『宇宙(そら)から考える光害』
         柳澤顕史氏 (自然科学研究機構 国立天文台岡山天体物理観測所助教)
      15:00- 第2部 講演『農作物の生育に影響のない夜間照明を目指して
         -光害が発生しないLED照明技術の開発―』
         山本晴彦氏 (山口大学農学部教授)
      16:30- 閉会挨拶 難波貞敏氏 岡山県環境カウンセラー協会(OPECA)会長
【主  催】環境省中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)
【共  催】公益財団法人 岡山県環境保全事業団、中国銀行
【後  援】岡山県、岡山市、倉敷市、岡山県環境カウンセラー協会(OPECA)

光害は、過剰または不要な光による公害のことで、屋外照明の増加、照明の過剰な使用等により「夜空の明るさ」が増大し、天体観測障害=「光害」として美星天文台から指摘され、美星町では全国初の「光害条例」が施行、アジア最大級の口径を持つ反射望遠鏡が設置されている国立天文台岡山天体物理観測所が鴨方にある。そこで宇宙(そら)から見た地球の光の現状、光害の現状、そして人・まち・地球に快適で心地良い光・照明の在り方についての話から、「光害」を理解する。

また、「光害」の生態系への影響を、光害阻止技術研究の第一人者である山口大学農学部教授山本晴彦先生から「植物と光の関係性」「光害事例・対策」についての研究成果を含めた講演を頂き、「光害」を理解し、「人・まち・地球に快適で心地良い光環境=良好な光」を実現し、光害の防止を考え、持続可能な社会の実現に寄与する。

第1部 講演『宇宙(そら)から考える光害』
柳澤顕史氏 (自然科学研究機構 国立天文台岡山天体物理観測所助教)

国立天文台岡山天体物理観測所は、岡山県南西部の浅口市鴨方町の竹林寺山(標高370m)に位置し、日本最大級の188㎝の反射望遠鏡を備えている。大学共同利用の施設で年間300人の研究者が順番に天体観測の研究を行っている。毎年8月最後の土曜日には一般開放を行っており、昨日は400人の訪問者があった。
天体観測における光害の現状として、空気中の分子やちり、ほこりが人工の光を散乱、反射することにより、夜空が明るくなり観測に支障を来していること、照明は必要なものであるが、問題は目的に合致することであり、必要以上の照明は不要であり、光漏れに留意が必要。2013年、香港は世界一の光害の都市になっている事実、続いて国際宇宙ステーション(ISS)から見た地球の夜の光の渦の画像が10年のタームで比較説明された 。
光害への対処としては、無駄を避け、必要な光に限定すること。また、農作物における被害の現状と対策は、次の講演、山本先生に委ねたい

第2部 講演『農作物の生育に影響のない夜間照明を目指して-光害が発生しないLED照明技術の開発―』
山本晴彦氏(山口大学農学部教授)

農作物に対する光害は、あまり知られていない。山口大学には附属農場があり、近年女子学生が増え、夜は真っ暗になる地域も多いので農道を照らす夜間照明が必要となっている。この照明が当たる圃場の稲の生育障害が起きた事実より光害を認識。
光害は、『良好な「光環境」の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、またはそれによる悪影響と定義する』とされ、イネやホウレンソウ等への影響の具体例から、照明器具の設置に対する注意喚起がなされた。
短日性、長日性農作物について、太陽光が当たる時間滞に基づく農作物の生育メカニズムについて、この自然光以外の人工光が夜間に照射されることが生育阻害の原因であると説明。
このメカニズムに基づき、光害を回避する照明装置としてLED に着目し、大学発ベンチャー企業を立ち上げ、(独)科学技術振興機構(JST)の補助金を受けて研究・開発に到達した。

行政の光害対策については、農作物への影響は認識しているが、照明の持つ本来の目的を考慮すると、光害発生=撤去、移設等の対策が困難であり、適切な遮光による対策しかできない現状がある。更に遮光板の影響、水田地帯に開通したバイパスによる稲作への影響が写真事例で説明され、光害を生ずる照明の特徴として、波長560nm~700nmの光が生育阻害をする。すなわち、蛍光灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプによる照明が光害を生ずる。
山口大学発ベンチャー企業として開発した「光害阻止LED照明」技術は、満足できる結果を得ている。今後は、光害発生の事実、そして光害阻止LED照明議出のPRに努め、光害抑制に貢献していきたい。

《成 果》
・天体観測への影響は朧げには想像できていた程度の認識から、明確に光害(ひかりがい)と言う新しい認識が参加者の間で共有できた事が最大の成果であると言える。
・稲作中心の農場の中央をバイパスが走ることにより、農作物(稲)への光害の程度とその対策が、光の波長と言う切り口で解明され、その対策としての照明器具の開発・販売を、大学発ベンチャー企業が担い商品化していること、無駄な光と防犯上必要な照明との棲み分けと対策が必要と説明され、且つ認識されたセミナーであった。

《課 題》
・参加者が少ない(=58名)ことにより、重要な情報が広く認識されないことが残念である。
・農業関係者の参加がなく、夜間照明(常夜灯)が農作物に与える影響を認識出来ないまま、畑の地力、施肥のムラが原因として認識されていることへの説明が出来ていない現況を、JAとか行政(農産課等)に呼びかける必要があったと考えられる。
・セミナー開催をスタートして、到達点に向けた今後のロードマップを計画、継続活動を実施していく必要がある。

この記事の発信者

EPOちゅうごく 編集部(へんしゅうぶ)

スタッフ

トップへ