【主催事業報告】「森里川海」つながりセミナー in 周南 中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)

【主催事業報告】「森里川海」つながりセミナー in 周南

山口県の森里川海流域全体の視点で、私たちの生きる基盤、森里川海の恵みを認識し、中山間地と海をつなぐ活動の必要性を認識するため、「森里川海連環学」を提唱する京都大学の吉岡崇仁教授による基調講演、さらに現在行われている環境保全活動の事例発表を通して、未来の産業と未来の世代に、これらの活動をつなげていく取組みを地域で考えることを目的とするセミナーを開催いたしましたので、ご報告いたします。

【日 時】
平成28年11月25日(金)13:00~16:30

【場 所】
周南市文化会館(地下展示室)

【参加者数】
89人

【主 催】
環境省中国環境パートナーシップオフィス

【共 催】
山口県、周南市、下関市

【内 容】
13:00~ 開会
挨拶 : 西 正賢 氏/環境省中国四国地方環境事務所広島事務所 環境対策調査官

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環境省が生物多様性、健全な水産資源の持続的利用、豊かな海、パリ協定にもとづく平均気温の上昇抑制を実現するためには、森里川海のつながりに着目し、流域が一体となり栄養塩類の循環、適正な森林保全、が必要との認識の上に立っていることと、そのために環境省が支援の取組みを行っていることをご紹介いただいた。今回のセミナーが、現状の理解、取組活動の把握等により、流域思考で豊かな瀬戸内海の実現、地方創生の契機になることを期待する旨、ご挨拶いただいた。

13:10~ 基調講演『 森里川海のつながりのなかで ~自然のめぐみを未来につなぐ意識~ 』
講師 : 吉岡 崇仁 氏
/京都大学フィールド科学教育研究センター長兼 徳山試験地長 教授

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2003年に設置された徳山試験地(周南市)をフィールドとして、自然科学者と社会科学者の連携による総合的学問「森里川海連環学」の研究を立ち上げたことについて基調講演が行われた。
『森は海の恋人』で有名な、海漁師の畠山重篤氏が、カキの養殖を行いながら、豊かな海の維持のために、上流域の森林の育成に長年取り組んできた事例、NIMBY施設(Not In My BackYard:社会的には必要だが裏庭には出来てほしくない環境施設)に対するエゴイズム、森林がもたらす生態系サービス(自然の恵み、森林がもたらす癒し等)を受けている人と興味のない人との存在価値の違い、住宅での国産材志向についての意識、国内外における森林や里地の経済的価値評価についての話題提供があった。これらの話題をもとに、環境意識は人それぞれであり、同じ事象を捉えても、その価値観が異なることを踏まえて、森里川海の恵みを今後も受け続けるためには、どうしたらいいかの投げかけがあった。

14:20~ 活動団体の事例発表
取組事例① 『 森里川海をつなぐ流域づくりの取組み 』
山口県環境生活部自然保護課/主幹 野村 由子 氏

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山口県環境生活部自然保護課の立場から、山口県の流域づくりの話について説明があった。
自然との関わりを見直すためには、上流域と下流域まで関係者の連携が必要、というのが県の考えである。連携事例としては、椹野川モデルについて説明があり、ダムによる河川水量減少、枝打ちのされない森林が原因で、山が痩せた状態になっていたことが、河口域でのカキガラの堆積、水産資源の漁獲量の激減へとつながっていたことが説明された。平成12年、森・川・海を保全する民間団体が設立され、平成16年に「椹野川河口域・干潟再生協議会」が設立され、上流域での間伐、植栽等の森の活動、中流域でのアユ産卵場造成、河川清掃、下流域での干潟耕うん、アマモ場造成等につながっていったことで、アサリの漁獲量増加、アマモ場の増殖、カブトガニの生息数増加、参加ボランティアの増加という結果につながっていき、「環境省地域循環共生圏構築事業」のうちの一つに選ばれた。
椹野川モデルを踏まえた他地域への展開事例として、錦川・島田川を挙げるとともに、「科学的分析」「住民参加」「息の長い活動」のキーワードを挙げられた。どちらの事例も科学的分析は問題はないが、関係行政、民間の相互交流がなく、住民のつながりが希であったことから、上流と下流の活動を繋ぐ連絡会議の設置・展開に取り組んだ。
課題として、補助金に頼る活動展開からの自立、流域ごとに課題が異なることによる目標設定を挙げられ、最後はチャレンジプランへの参加の呼びかけで締めくくられた。

( - 休 憩 - )
取組事例② 『 魅力ある地域づくり、あったか村の取り組み 』
有限会社 あったか村/代表取締役 白松 博之 氏

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あったか村は、阿武町で、「人の健康」「地域の健康」「地球の健康」の三つを目指して活動している、阿武町は、人口3,700人余の小さな町であるからこそ、顔が見え、各自が責任を持って活動する地域である。
2003年有限会社を立ち上げて、農産物・加工品、健康住宅のキット、開発した水を外部に出さないトイレの販売を行っている。家は地元木材以外使用せず、地域にあるものを使って、稼いだお金で環境に貢献できる活動を実施。活用されていない自然素材、自然エネルギーの見直し、木炭活用、ロケットストーブの開発活用を考え、極力化学物質を出さない、持ち込まない活動を行っている。学生達とも活動を実施しているほか、イベントとして森の中コンサートも開催している。
今後の課題としては、活動の地域に広め、日常活動を地球環境問題へとつなげていくためには、知恵・工夫・サポーター養成が必要と述べられ、最後に仲間を集め、地域へつなげ、そして楽しみながら環境問題をしっかり考えることが大切であると締めくくられた。

取組事例③ 『 「棚田清流」の恵みを活かして 』
中須北棚田保存会・棚田清流の会/会長 佐伯 伴章 氏

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中須北は周南市から車で20~30分、海抜300~350mに位置しているすり鉢状の集落で、5集落からなり96戸、人口170人の地区であり、当地区で結成された棚田清流の会では、「評論家不要」「強制しない」「来たものは杖をついていても使え」をモットーに活動しており、当地区の全戸・全員が加盟している。
棚田清流の会では、以下の活動に取り組んでいる。活動の中には、平成15年「全国むらづくり」農林水産大臣賞受賞、平成22年「全国美の里さとづくりコンクール」農林水産大臣賞受賞と、受賞をしたものもある。
・「泣かす米」「泣かす酒」を軸とした6次産業化。
・草焼きなど、錦川の上流をきれいにする活動。
・年間6回100名程度を受け入れる農業体験交流。
・地元農家と連携し、田んぼを貸して、オーナーになってもらい米作り。
・空き家対策として、漬物加工所、菓子加工所をオープンし、食事処を運営。
村づくりに際して、農林水産大臣賞受賞の際、儲ける仕組みが必要でボランティア依存ではダメと言われた。農家でできたものに付加価値を付けた活動、6次産業化を確立し、天皇杯を目指したいと、抱負を述べられていた。

取組事例④ 『 「森里川海」の恵みを活かして 』
百姓塾「百姓庵」の塩づくり/代表 井上 雄然 氏

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井上氏は長門市から西に車で一時間走ったところの半島の端、油谷地区にて民宿を始めた。自宅ではオール薪化を進めており、ロケットストーブオンドル(床下暖房)、かまど、岩風呂設置など、自然の恵みを活かしており、農業としては、米づくりを推進。子ども達を田んぼに入れ、足で耕し寝転んで生物たちに触れる、どろんこ田植えを実施する、といった活動をしている。
井上氏の本業は塩造りである。キャリアは9年目になり、昨年できた塩はギフト商品にしている。塩については、以下の活動を実施している。
・塩は海水の恵みであり、海が汚れていてはダメなので、毎年海岸清掃を行っている。2~3年前から1000人規模となった。
・夏は子ども集めて塩づくり体験イベント開催した。ゴミ拾いとのつながりを説明すると本気になってくれる。
森里川海の連携の観点においては、森の清掃活動により、伐採した木々をもとに自然観察やバーベキューを実施することで、森の話、海の話をしながら環境の話を実施していることを述べられた。最後に「全国の塩屋から塩とにがりを提出してもらい、ミネラル分析、重金属分析をしてデータ化を実施。工場等が建設された場合のデータ変化を見て、環境を守る、海の門番となりたい」という夢を述べて講演を締められた。

取組事例⑤ 『 下関市の海岸漂着ごみについて 』
下関市長府地区まちづくり協議会 環境部会/副部会長 松田 忠吉 氏

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下関市の海岸15か所を回って清掃を実施した記録をもとに、下関市の海岸漂着ゴミの実態について説明があった。
・角島はポリ容器が非常に多く全国2~3位。また、発砲スチロール多が多くマイクロプラスチック化している。
・吉母海岸は漁網が多く、また中国、韓国からのゴミが多い。
・長府宮崎海岸は瀬戸内からのゴミとなり、循環したものが漂着している。
また、漂着ゴミの問題点は回収量を超えること、手の届かない場所に多く残ること、シーズン(5~7月)以外清掃されないこと、海中・海底に多く残っていること、劣化、有害化(マイクロプラスチックの吸着)していることを挙げている。
下関市の取組みとして、「日韓海峡海岸ゴミ一斉清掃」「リフレッシュ瀬戸内」「自治会清掃」「企業・団体による清掃」等を紹介され、特に自治会清掃が重要であると述べられた。
海岸清掃の課題は継続、範囲の拡大、排出量の抑制であり、取組団体の問題点としては高齢化、人材不足、情報不足、資金不足、連携不足を挙げている。これらの課題解決に向けて、まちづくり協議会を設立し、そのうちの長府地区まちづくり協議会に属して活動をしていることについて述べられた。
最後に、「漂着ゴミ清掃の中には生物の棲家、食糧となっているものもあるので、人工物のみを回収するのが良いと個人的には考えている。」という提案で締めくくられた。

16:15~ 質疑応答
進行 : 下村 宣子/EPOちゅうごく地域実行委員

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5つの取組事例が行われた後、質疑応答が行われた。行われた質疑の内容は以下の通りである。

(1) 中須北棚田保存会食事処「たまちゃん」のオープン日時の確認
回答:第一、第三の土日11:30-12:30 但し原則予約必要
(2) 百姓庵の四季の塩は素晴らしい。売れると思う。気が付いたのは個人か、仲間と協議か
回答:一人で気が付いた。油谷湾は狭い。ここに二つの川が流れ込み、汽水域となっている。有名なシェフに味を見てもらったが確かに違いが出ていた。
(3) 事例発表者に確認したい。取組への行政の関与、応援の度合いは如何か。
回答:あったか村 白松氏…有限会社であり、支援はない。イベントのPRくらい。
中須棚田 佐伯氏…周南市の農林課が電話受付をしてくれる。
百姓庵 井上氏…海ゴミ清掃に関しては長門市役所前面バックアップあり。
下関市 松田氏…まちづくり協議会であり、助成金貰っている。

16:30 - 閉会

【評 価】
参加者の感想・意見では、概ね満足との意見が多かったが、優れた活動の継続性、今後の活動の水平展開をいかにすべきか、解決策が見えていない。参加者は高齢の方が多く、折角のセミナー内容を若い世代に伝えていくことの難しさが浮き彫りとなっている。環境に興味のない人たちへの、現状を知らせる必要性、その解決方法が見出せないことが課題である。また、限界集落の存在と生き残りのための、活動内容を周知しなければならないことを痛感したが、こうした活動が個別展開されている。如何に集約し、発信していくかが課題。
成果としては、森里川海連携で海の幸、塩までもが影響を受けていること、活動団体が連携して、自然の恵みを守らねばならないとの問題提起の意味を持ったセミナーとなり、内容のあるセミナーが開催できたと考えられる。

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