【主催事業報告】生物多様性と地域の活性化に向けた広島セミナー 中国環境パートナーシップオフィス(EPOちゅうごく)

【主催事業報告】生物多様性と地域の活性化に向けた広島セミナー

現在、地球上には870万種の生きものがいて、森や川、草原、湿地、海などいろいろな場所で、互いにバランスを保ち生きている。そして、この多種類の生きものが複雑に関わりあって存在している「生物多様性」が、人間活動、外来種、地球温暖化等により、危機に晒されていることを受けて、我が国においては「生物多様性国家戦略2010」を策定、広島県においては平成25年3月に「生物多様性広島戦略」を策定し、具体的な行動計画を定めている。

これらを受けて、直面している危機に対する認識と「100年後の地球のグランドデザイン」実現に向けて、今を生きる我々に問われている「行動」の具体化を目途としたセミナーを開催いたしましたので、ご報告いたします。

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【日 時】
平成28年10月19日(水)13:00~16:30

【場 所】
広島YMCA国際文化センター 2号館 地階 コンベンションホール

【参加者数】
64人

【主 催】
中国環境パートナーシップオフィス

【共 催】
広島県、認定NPO法人西中国山地自然史研究会

【後 援】
広島市、廿日市市、広島商工会議所、NHK広島放送局、中国放送、広島テレビ、広島ホームテレビ、テレビ新広島、読売新聞広島総局、中国新聞社、広島エフエム放送、FMはつかいち76.1MHz

【内 容】
13:00 -開会挨拶 環境省中国四国地方環境事務所 課長 原田 幸也 氏

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開会挨拶では、二つの大きな国際目標(SDGs(持続可能な開発目標)とパリ協定)と、生物多様性国家戦略を踏まえた、生物多様性における環境省の取組みと方向性についてのご紹介があり、生物多様性の保全が、地域の経済・環境教育・文化的な属性、生活の場の基盤となる重要なものであるという事を、セミナー等で事例を積み重ね明らかにしていくとともに、生物の多様性の保全がなぜ必要なのか、その意味や意義を市民に分かりやすく伝えていく事が重要であることを述べられた。

13:10 -基調講演①『広島県の水生昆虫- 失われつつある多様性 -』

講師:坂本 充 氏 /広島市森林公園こんちゅう館 主任技師

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広島県のゲンゴロウを中心に、水生昆虫の現状と、取り巻く環境の変化について知り、危機感を持つきっかけになるような話を提供いただいた。

ゲンゴロウの主な減少要因としては年代ごとに異なっており、
・1970年代までは、開発による水質汚濁など様々な影響。
・80~90年代は、産卵場所の消失と、農薬による餌資源の減少、冬季乾田化、外来生物や護岸生物による影響、植生環境の劣化の影響。
・90年代から現在においては、農薬の変化、気候変動による植生遷移の影響。水田やため池、その周辺の管理放棄や消失など環境変化が影響していることを挙げられた。

里地の生物多様性維持のための課題として、「害虫管理と保全生態学を合体させ、水田の生息群種と共存させた、総合的生物多様性の管理の流布・実践」「初等中等教育における、生物多様性に関する知識の児童生徒への教授」「教員養成課程における、生物多様性に関する科目の創設と必修化」を挙げられた。

14:05 - 基調講演② 『南限域に生息するカワシンジュガイの保全と地域の保護活動』

講師:内藤 順一 氏 /認定NPO法人西中国山地自然史研究会 副理事長

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生物多様性、地域の活性化の観点で、両生類や魚類など色々調べている内藤氏が、内藤氏自身のライフワークでもあるカワシンジュガイのこと、ヌートリアによるカワシンジュガイの食害、特定外来生物の話について、実物なども交えて話題提供が行われた。

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<カワシンジュガイの被害個体サンプル>

カワシンジュガイについての説明と研究の経緯、カワシンジュガイの寄生特異性と生活史、取り巻く環境について説明が行われた後、ヌートリアによる淡水二枚貝への加害による影響を説明された。カワシンジュガイと生物多様性の関わりについて説明が行われた後は、主にヌートリアを例に取り、特定外来種について説明された。

(14:55 -休憩)
15:05 - 取組事例等の紹介
取組事例①『広島県の生物多様性に対する取組み』

講師:神川 勇人 氏 /広島県環境県民局自然環境課 課長

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広島県環境県民局自然環境課課長という立場から、広島県での生物多様性に関する取組として、条例による保護と、県から委嘱された「野生生物保護推進員(専門家)」による生息・生育状況の確認、「レッドデータブックひろしま」の作成、発行への取組み紹介が行われた。また、生物多様性の確保や自然と共生する社会の実現を目指すことを目的として、官民一体となり「八幡湿原再生協議会」として活動を展開した八幡湿原自然再生事業の事例と、その後の取組みについての紹介、平成25年3月に策定した、「未来につなげ命の環!広島プラン-生物多様性広島戦略-」に関する取組についても紹介があった。
広島県の生物多様性への意識に関する課題として、生物多様性の重要性・必要性について県民の理解が不足していること、広島県での生物多様性の認知度が16.7%と低いことが挙げられ、普及啓発の難しさを実感されていた。お願いとして、自然体験活動の中で、「生物多様性」についての話題やワードを加えてほしいことと、県が昨年、一昨年度に実施した「広島県生物多様性人材育成講座」で養成した人員が立ち上げた「広島県生物多様性普及ネットワーク」が実施する「遊びの会」にぜひ県民の皆さんも参加し、楽しんで「生物多様性」を実感していただきたいという思いを伝えられた。

取組事例②『特別天然記念物オオサンショウウオの保全活動-地域・大学・自治体の協働-』

講師:清水 則雄 氏 /広島大学総合博物館 助教

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清水氏がオオサンショウウオの保全活動を開始した経緯について説明がなされた後、椋梨川での動向調査を事例に、オオサンショウウオの危機とその原因について触れられた。それを踏まえた普及啓発活動についての様子を説明されるとともに、啓発活動成果として、東広島市による重点保護区域指定による人工巣穴や隠れ家、魚道など同種に配慮した設計や産廃業者への規制強化がなされたこと、地元の中学校・高校からの出前授業・連携の打診、「東広島オオサンショウウオの会」の設立による活動の継続性が担保されたこと、環境省による「重要な里地里山」に西条・造賀、豊栄町が選定。また、出前授業先の地元小学校が環境大臣表彰を受賞したことを挙げられた。これらの成果を踏まえ、今後の活動への展望も語られた。

取組事例③『広島県内の生物多様性に関する環境学習-それはなにもないからはじまった-』 

講師:奥山 秀輝 氏/広島県生物多様性普及ネットワーク会長・環境カウンセラー

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2015年よりスタートした三和小学校での「川を題材にした総合学習」を事例に、美波羅川を軸とした、計5回の奥山氏の環境学習プログラムが進行していった過程と、生徒や地域に起こった変化について、事例紹介が行われた。美波羅川を題材にした総合学習は、他校の先生に来ていただけるほどの研究集会を開催するまでに至り、担任および保護者から、「児童それぞれが、自己主張ができるようになった。」「自然はいろんな力で児童を導いてくれた。」「学校の話を全くしなかった子どもが、川の勉強のことは毎回話してくれる。私自身も川の勉強の話が楽しみになった。」という声が聞かれた。
総合学習を通じて、「生物多様性」は、人や文化を育み、次世代に繋いでいく必要不可欠なものであると強く感じることが出来る時間であり、多くを知り、経験し学習することで「モノサシ」ができ、「川と自分」「山と自分」など 価値判断ができる基準となることが紹介された。また、奥山氏の「生物多様性」の伝え方は、「知ろう、譲ろう、伝えよう」「地域に合ったことを伝えよう」ということを念頭に、人がいれば必ず存在する「自然の恵み」は当たり前にあるから気付かないが、当たり前にあるとは限らない、ということが紹介された。

取組事例④『EPOちゅうごくの取組紹介』

講師:西村 浩美 /EPOちゅうごく コーディネーター

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EPOちゅうごくコーディネーターの西村が、EPOちゅうごくの取組みとして、9月より生物多様性普及活動リーダー、指導者等を対象に、4回シリーズで地元の素材を使って生物多様性を伝えるためのスキルを身に着けることを目的として、スキルアップ講座を実施した事例を紹介した。

16:20 - 質疑応答
4つの取組事例について発表が行われた後、質疑応答が行われ、16:30をもって閉会となった。

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16:30 - 閉会

【評 価】

生態調査の大切さや、実は身近で起こっている「生物多様性の危機」について、また広島県内の生物多様性保全の取り組みについて、より身近な問題として「伝えること」の重要性を紹介できたシンポジウムとなった。アンケートに回答していただいた来場者の中には、福岡県からの来場者もおり、関心の高さがうかがわれた。
参加者の感想・意見では、概ね満足との意見が多かったが、発表続きで長い事例発表後では時間が離れすぎて質問しにくいとの意見もあり、もっと会場参加型の工夫があればよかったと考えている。

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